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FFPEからの試料抽出 Formalin-Fixed Paraffin-Embedded Tissue Preparation

超音波を当てるだけでOK ! 簡単 & ロスが少ない試料抽出

FFPE 検体から試料を抽出する際にはパラフィンを取り除きます。一般的にはキシレン等に FFPE 検体を浸し、パラフィンを溶解させる「受動的な手法」が用いられています。 この手法は簡便である反面、有機溶媒を使用することに加え、段階的にキシレンへ浸漬するため時間がかかったり、試料をロスしてしまうといった側面も有しています。

Covaris AFAテクノロジーは強力な超音波処理を実現する効率的な技術です。AFAにより30秒程超音波を当てるだけでパラフィンがミセル化し遊離します。 この時、有機溶媒を用いる必要は無く、水系の緩衝液中での処理が可能です。そのため、核酸等試料の変性を防ぎ高品質な試料抽出が可能となります。また、FFPE検体と緩衝液をチューブに入れるだけで良いため、貴重な試料をロスする恐れもありません。ここでは、AFA による脱パラフィン手法を「能動的な手法」とします。

   

高効率な脱パラフィン ~残留パラフィンの評価

パラフィンは青色光により励起され、蛍光を発します。以下の図は蛍光顕微鏡により FFPE 検体に残留しているパラフィン量を評価したものです。
AFA による「能動的」な脱パラフィンを行った FFPE 検体の残留パラフィン量はキシレンを用いた「受動的」な脱パラフィンと比較して1/3程度であり、AFAを用いることで効率的にパラフィンを除去できていることが分かります。

残留したパラフィンや有機溶媒は後の抽出工程である脱クロスリンクやProteinaseK 処理を阻害します。そのため、脱パラフィンが不十分な場合には脱クロスリンクとProK処理も不十分となります。 余計なタンパク質等が架橋されている配列は NGS で読むことが出来ない為、不十分な脱パラフィンはシークエンスバイアスの一因となり得ます。AFAを用いて脱パラフィンを実施した場合には確実にパラフィンを除去することができるので、脱クロスリンクやProK処理が十分に機能し取りこぼしのない核酸の抽出が可能となります。

収量や品質の向上が期待できます ~ DNA

DNAの収量

右図は 腎臓 (Kidney) と 子宮 (Uterus) の FFPE 検体 (厚さ 20 µm の切片) から抽出した DNA 量を示しています。 測定は Qubit を用いています。

青が Covaris 社抽出キットとAFAを用いた場合の収量、赤がキシレンを用いた他社抽出キットでの収量を示しています。他社抽出キットと比較して AFA を用いたCovaris 社抽出キットでは収量が2~3倍程度高い ことが分かります。

DNA の品質

上図はFFPE 検体用の QC キットを用いてFFPE 検体から抽出した DNA の品質を比較した結果(*)です。 本 QC キットでは、NGS で配列を読む為にはΔCq が2以下であることが望ましいとされています。AFA による効率的な脱パラフィンにより高品質なDNA を抽出できる為、NGSでの解析が困難であったサンプルであっても解析が可能となるケースもあります。
*illumina 社 FFPE QC キット を用いています。

NGSでの解析結果

上図は、腎臓の FFPE 検体から Covaris キット及と他社キットを用いて抽出した DNA と新鮮凍結検体(Fresh Frozen)から抽出した DNA を次世代シーケンサーで全ゲノム解析(**)を行った結果です。NGS の解析結果を IGV ビューワーで可視化したもので、シークエンスカバレッジが10以上の配列を実線で示しています。

全ゲノムシーケンスの結果では、他社キットに比べより多くの領域で10以上のカバレッジとなっています。さらに、GCの含有量が多く切断されにくい傾向にある19番染色体のシーケンス結果においても、他社キットに比べ多くの領域でカバレッジが10以上となっています。これらから、受動的な脱パラフィンを行う他社キットに比べ、AFA による能動的な脱パラフィンを行う Covaris 社抽出キットでは例えCG リッチな領域であっても信頼性の高いデータが得られていることが分かります。AFA による確実な脱パラフィンにより、 NGS の結果が大きく変わる可能性があります。
**PCR フリーのライブラリー調製キットを用いています。

収量や品質の向上が期待できます ~ RNA

一般的に RNA は不安定な分子である為、 FFPE 検体から抽出した RNA は DNA よりも NGS の解析が難しい傾向にあります。
そのため、FFPE 検体からの RNA 抽出工程ではRNAの分解と品質の低下を最小限に留めることが重要です。AFA による能動的な脱パラフィンはマイルドな条件下で行う為、RNA の分解を引き起こしにくく高品質なRNAを得られる傾向にあります。

RNAの収量と品質

下図は腎臓(Kidney)、肝臓(Liver)、子宮(Uterus) の 厚さ10 µm のFFPE切片二枚から抽出した RNAのうち増幅可能なRNAの量(左***)と200nt以上の断片の比率(DV200値, 右)を示しています。NGSでの解析時には増幅可能なRNA量の下限は0.2 ng/ulとされています。いずれの試料でも下限値以上のRNAが得られてはいますが、 AFA を用いたCovaris 社抽出キット の方が収量が高いことが分かります。また、DV200値についてもAFAを用いた場合の方が高い値となっています。これらより、 AFA を用いたCovaris 社抽出キットを用いることで、増幅のかかる分解していない長鎖RNAを抽出できることが分かります。
*** ThermoFisherScientific 社の Functional RNA Quantitation assayを用いています。